<全体の構成>
はじめに
1章 仮説の提示:龍の起源における第三の極の存在
2章 ヨーロッパの悪いドラゴンと東洋の善い龍
3章 ヨーロッパの龍の起源~メソポタミアのシュメール~
4章 ヨーロッパにおけるドラゴンの系譜
5章 東洋における龍の起源~インド・中国・アジア・日本~
6章 日本における龍の起源
7章 中南米における龍の起源:メソアメリカ
8章 中南米における龍の起源:アンデス
9章 結論と考察:龍の起源の第三の極
おわりに
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1章 仮説の提示:龍の起源における第三の極の存在
1-1 発端

 2019年3月に東京大学総合研究博物館小石川分館へ行ったときに、「龍」を連想する文様のある壺が展示されているのを見つけました。説明には、「動物彩文轡型ボトル ペルー北部海岸 モチェ文化1~7世紀」と記されていました。

鐙型注口土器
図1-1 動物彩文轡型ボトル/モチェ文化/ペルー北海岸/1~7世紀【注01】
 
 私がこの動物の文様に「龍」を連想したのは、高松塚古墳と江西大墓の壁画の青龍の図柄が頭をよぎったからでした。そして、モチェ文化(南アメリカ)には「龍」または「ドラゴン」が存在したのか?と衝撃を受けました。
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図1-2 高松塚古墳の壁画に描かれた青龍【注02】
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図1-3 江西大墓(高句麗)壁画に描かれた青龍【注03】

1-2 仮説:2極から3極へ
 これまでの私の理解するところでは、「龍」の起源は2つの極、
  第一極:ヨーロッパの「悪いドラゴン」
  第二極:インド→中国(→朝鮮半島)→日本へと伝わった「善い龍」
 これに加えて、南米に(のちに中南米にひろげた)第三の極があるとすれば、「龍」の新しい世界が開くのではないかと興奮しました。
 2019年頃に、モチャ文明が存在する
アンデス文明、さらに中米のメソアメリカ文明について少し勉強してみた結果、「龍蛇」という概念に行き着きましたが、ヨーロッパのドラゴンや東洋の龍に相当する進化したイメージを描くことが出来ませんでした。
 その後、約5年が経過しましたが、その間「龍の第三極」については忘れたことはなく、今回改めて、二つの極について整理し、第三の極の仮説を検証してみようと試みました。
 2章から6章では、
ヨーロッパの「悪いドラゴン」と東洋の「善い龍」について概観し、7章でメソアメリカ、8章でアンデスの龍蛇を、9回で中南米の第三極の「(仮)龍蛇)」について考察しました。
三極
図1-3 龍の起源:(仮説)2極から3極へ


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<出典>
注01)東京大学総合研究博物館小石川分館で展示 2019
注02)笹間良彦著『図説・龍の歴史大事典』(遊子館 2006)
注03)シルクロード特別企画展「素心伝心~クローン文化財 失われた刻の再生~」2017
   東京藝術大学 大学美術館