この絵巻は、鎌倉時代(13世紀)の作、高山寺に伝わったもので、『華厳縁起』とも略称されます。鎌倉時代に盛んだった祖師・高僧伝の類の絵巻で、新羅国の華厳宗の祖師義湘・元暁両大師の伝記を描いたものです。
 絵巻。6巻。国宝。京都・高山寺蔵。
 栂尾山高山寺は、鎌倉時代の初めに活躍した明恵上人(高弁)が、華厳宗の道場として再興したもので、この絵巻も、筆者は明恵上人の発案で、上人と親しい関係にあった恵日房成忍と考えられています。(絵巻大成p86)

<物語:後半の「義湘絵」>
 前半は「元暁絵」で元暁のお話。後半が「義湘絵」。
 中国唐の時代。
 義湘・元暁の2人は修行のため唐に向かう途中塚穴に雨宿りして鬼に出会います。元暁は悟るところあって入唐を思いとどまり、義湘は求法のために唐土に向かいます。
 ある港町に住んでいた名を善妙という長者の娘は、新羅から仏教の勉強のためにやってきた僧が美男であることを知り、憧れていました。義湘という名のその僧が、たまたま彼女の家に托鉢に訪れたとき、善妙は声を尽くして恋慕の情を訴えます。
 けれども、義湘は「自分は僧であるから、恋を受け入れることはできない。その心をもっと広く持って仏法を支える気持ちになさい」と諭します。

唐に渡った義湘は、長安で至相大師に会い、無心に講説を聞きく。
やがて、留学を終えて義湘は帰国の途につく。
出航したあとにそれを知った善妙は、義湘のために取り揃えていた箱(仏具など)を持って港に行く。
船ははるか沖合に遠くにかすんでいるのを見て、浜の砂に伏して嘆き悲しむ。
善妙は、仏具の箱を船まで届けたまえと投げ入れる。
そして自分も海中に身を躍らせ、波の底に沈む。
30-640-DSC_9388
恵日房成忍:日本絵巻大成17 華厳宗祖師絵伝

すると、善妙の心の深さのために、その身が龍に変わる。

10a-DSC_9372
恵日房成忍:日本絵巻大成17 華厳宗祖師絵伝
11-IMG_1009
山名義海模:東京国立博物館 2024年の初めの龍づくし 華厳宗祖師絵伝 義湘絵 巻第三(模本)
11-DSC_9579

義湘の船を龍の背中に乗せて、無事に新羅に送り届ける。
21a-640-DSC_9390
恵日房成忍:日本絵巻大成17 華厳宗祖師絵伝

義湘は新羅にもどり、浮石寺で講説を行う。

【主に参考にした文献など】
*1:日本絵巻大成17 華厳宗祖師絵伝(華厳縁起)
*2:国立文化財機構所 蔵品統合検索システム 華厳宗祖師絵伝(模本)
*3:東京国立博物館 2024年の初めの龍づくし 華厳宗祖師絵伝 義湘絵 巻第三(模本)